事例に学ぶ事業承継
わたしたちがこれまでにお手伝いをさせていただいた事例のご紹介をします。
業種 | サービス業 | 業務内容 | 情報サービス業 |
創業 | 平成2年 | 従業員 | 8名 |
代表者年齢 | 65歳 | 地域 | 尾張 |
資本金 | 1,000万円 | 売上高 |
業種 | サービス業 |
業務内容 | 情報サービス業 |
創業 | 平成2年 |
従業員 | 8名 |
代表者年齢 | 65歳 |
地域 | 尾張 |
資本金 | 1,000万円 |
売上高 |
1.事業継承に至った経緯
当社は、現代表者が、脱サラして起業した情報サービス業で、一時期は、大きく売上高を伸ばし多額な利益も計上しましたが、大手業者が参入してきたことから競争環境が大きく変化し価格競争に巻き込まれた結果、急激に売上高が落ち込み、ここ数年間は大幅な欠損が続き、資金繰りも苦しくなってきています。
しかしながら、取引先で修業し数年前に当社に入社した長男が、先代の事業を引き継ぎつつ、自分が思い描く新たな分野に進出したいとの希望から、事業の「再建と承継」に着手したく相談がありました。
2.事業承継における現状
代表者は、営業能力にたけ、独自の個性と努力により当社を業界でも一目置かれる存在に育て上げました。しかし、事業環境が大きく変化する状況下でも従来の積極路線を続け、また、財務や経理を疎かにしていたことから、急速に業績が落ち込むとともに、資金繰りも悪化してきました。
一方、後継者は、取引先から当社を見つめつつ、本業と隣接するものの独自の事業を始めたいと思い当社に入社し、事業の再建を実現して資金繰りを改善し、自らが考える事業に資金投入して大きく事業展開したいと考えています。
後継者の事業への熱意は父親譲りとも思われ、「事業経営への思い」という点では、父から子へ十分に引き継がれているものと思われますが、事業の再建計画や新規事業の計画には不十分な点が見受けられ、また、株式の引継ぎ方法や株主構成の整理といった課題も認められました。
3.事業承継に係る課題とその対応策
(1)事業の再建による資金繰りの改善
当社は、好況時に不動産を次々に購入していたことから多額な銀行借入金を抱え、毎月の返済資金の負担が資金繰りを悪くしています。
このため、今回の支援を契機として、不動産の売却計画を立て1件ずつ実現させることにより、資金繰りを改善し、事業資金の確保を目指すこととしました。
また、販売管理費等の連年比較から、売上の減少にもかかわらず費用の削減が放置されていることが判明し、大幅な経費削減の実現に着手しました。
(2)後継者による新規事業への挑戦
後継者は、すでに自らが責任者となって、既存の事業と大きなシナジー効果が期待される分野への進出を図っています。
後継者からは、次々に事業展開のアイデアが繰り出され、事業に対する強い意欲が感じられ、「事業の経営」という面では、父である現代表者の思いを十分に引き継いでいるものと思われます。しかし、資金面や人材面からの検討に欠けているところもあり、引き続き「管理面」からのフォローの必要性が感じられます。
(3)後継者への株式の引継ぎ
安定的な経営を行うためには、株式を後継者である長男に集中させることが必要ですが、当社は、過去の好業績を反映して純資産が多額である一方、売上高が落ち込むことにより株式の評価上、類似業種比準価額方式から純資産価額の影響を大きく受ける中会社になっており、高額な評価額となっています。
このため、まさかの事態(突然の相続発生)に備えて、事業承継計画を提出しておくことを提案しました。
なお、分散している株主構成の整理には、資金が必要となることから、事業の再建が見えてきてから着手することとしました。
4.サブマネージャーの所感
当社の事業自体は、厳しい状況にありますが、後継者の強い事業意欲には感心させられました。事業の経営においては、現代表者はむしろ一歩下がっている感じで、後継者は自らの力量を試したいとの意欲を感じます。
ただ、事業計画の内容や資金繰り計画等に粗い面も見受けられるため、引き続き何らかの支援(専門家の派遣等)でしっかりフォローができれば、まさしく「ベンチャー型事業承継」の成功例になることが期待されます。