事例に学ぶ事業承継

わたしたちがこれまでにお手伝いをさせていただいた事例のご紹介をします。

その日のための心構え、そして決断

後継者としての問題意識が経営者としての第一歩です
業種 建設業 業務内容 建設工事業
創業 昭和23年 従業員 20名
代表者年齢 78歳 地域 尾張
資本金 3,000万円 売上高 10億円
業種 建設業
業務内容 建設工事業
創業 昭和23年
従業員 20名
代表者年齢 78歳
地域 尾張
資本金 3,000万円
売上高 10億円

1.事業継承に至った経緯

当社は、現代表者の先代が、戦後まもなく立ち上げた事業を基盤にして、専務である
弟と協力し、地元の発展とともに地域の優良企業に育て上げました。
代表者兄弟は、これまで事業の拡大と更なる充実に邁進してきましたが、お互いに80
歳を目の前にし体調にも不安を抱えるようになり、事業承継に着手するため相談がありました。

2.事業承継における現状

後継者は、現在、当社の経理担当をしている現代表者の長女(50歳)とのことです。代表者、専務ともに、お子さんは姉妹であり、従業員承継の可能性も探りましたが、適任者が見つからず、結果的に代表者の長女を後継者としました。
後継者としては、男性ばかりの職場をきちんと仕切っていけるかという不安がある一方、日ごろ感じている経営や事務の改善を実現して、会社経営の近代化を図り、更なる発展を実現させたいという意気込みも大いに感じられます。  
なお、株式は兄弟間で概ね均等に保有しており、どのように後継者へ株式(議決権)を集中させるかが大きな課題となっています。

3.事業承継に係る課題とその対応策

(1)代表者就任予定の社内外への公表
代表者の親族内では、代表者の長女が後継者になることは了解されていますが、従業員や取引先への公表はされていませんでした。
外部からは、代表者が高齢であり後継者も見当たらないことから、不安視される声もあるとのことで、早急に公表することを勧めたところ、年始の従業員あいさつにおいて、長女を正式な後継者とすること、次の定時株主総会で代表取締役社長に就任させること、しばらく共同代表として伴走期間を確保すること等を表明し、従業員に安心感を与えることができました。また、同時に主力の取引先にもその旨をお知らせし、力強い支援を得ることができたとのことです。

(2)経営改善と経営者としての成長
現代表者は、先代からの事業を引き継ぎ、強い信念と旺盛な事業意欲により事業を成長させてきましたが、経理担当として会社の内部から経営状況を見てきた後継者にとっては、いろいろと改善したい事項が認められるとのことです。
このため、今回の支援でこれらの改善点を抽出、整理し、タイムスケジュールを作成して一つずつ解決していくこととしました。後継者の問題意識に裏打ちされた事業改善を実現していくことが、経営者として成長していく過程であると考えられます。
当面は、先代との伴走により、その「経営理念やその思い」を受け継ぎつつ、作業現場の状況についても把握していくこととしています。

(3)後継者への株式(議決権)の集中
安定的な経営を行うためには、株式を後継者である長女に集中させることが必要ですが、高額な株式評価と代表者の年齢を考えると、手段は限られたものとなります。
現実的には、事業承継税制の活用、種類(無議決権・配当優先)株式への転換、相続時の株式買い取り等を組み合わせて対応することとなります。

4.サブマネージャーの所感

事業承継の時期としては遅れていましたが、後継者がきちんと問題意識をもって社内の事務に臨んでいたことから、事業の進むべき方向性などに関して経営者としての準備ができていたものと思われます。
後継者として内外にきちんと表明したことにより、自らの退路を断ち、前進あるのみです。先代の思いを引き継ぎ、従業員の支持を集め、取引先の支援を得て、先代に劣らない経営者に成長されることが期待されます。