事例に学ぶ事業承継
わたしたちがこれまでにお手伝いをさせていただいた事例のご紹介をします。
業種 | 製造業 | 業務内容 | 工作機械部品製造 |
創業 | 昭和56年 | 従業員 | 18名 |
代表者年齢 | 65歳 | 地域 | 尾張 |
資本金 | 1,000万円 | 売上高 | 8億円 |
業種 | 製造業 |
業務内容 | 工作機械部品製造 |
創業 | 昭和56年 |
従業員 | 18名 |
代表者年齢 | 65歳 |
地域 | 尾張 |
資本金 | 1,000万円 |
売上高 | 8億円 |
1.事業継承に至った経緯
当社は、工作機械等の産業用機械部品の製造業として、多品種少量生産に的確に対応しつつ、品質と納期をしっかりと守ることで顧客から高く評価されています。創業以来、現代表者が財務・営業部門を担当し実弟の専務が製造部門の責任者として、二人三脚で経営してきており、新規事業にも積極的に取り組むなど順調に発展してきました。
今回、両者ともに60歳を越え、また、それぞれのご子息も後継者として当社に入社したことから、事業承継について計画的に進めたいと思い当方に相談がありました。
2.事業承継における現状
後継者は、代表者(兄)と専務(弟)それぞれのご長男で、兄弟から従弟同士への承継となります。後継者は、両者とも未だ30歳前半であり、取引先企業での修行後数年前に当社に入社し、現在は、製造現場の第一線で、工作機械の操作を行いつつ、分担部門の管理を任されています。
株式については、代表者兄弟がおおむね6:4で保有していますが、若干の名義株が存在すること、また、これまでの好業績が反映され株式の評価が高くなっていることが課題となっています。
3.事業承継に係る課題とその対応策
(1)後継者教育
代表者兄弟は、一代で事業を育て上げたこともあり高い経営理念と旺盛な事業意欲を持っており、自分たちの「思い」を何とか後継者に伝えていきたいと考えています。また、自分たちのような関係(兄が経営全般、弟が製造現場)で、それぞれの後継者に引き継ぐことを望んでおり、後継者である両者もお互いが両輪となって事業を支えていくことを理解しています。
しかし、現状は、日々の現場作業に忙殺され、経営に関する知識の習得や工場全体の作業改善への意識の醸成はできておらず、将来に不安を感じていました。
このため、計画的に時間をとり、各種専門家や公的機関のセミナー等を活用して、経営者としてまた工場長として必要な基本知識(財務管理、利益管理、原価管理等)を身に着けていくよう提案しました。一方、代表者と専務には、自分たちが後継者に伝えたい「思い、理念、原則」を共有できるよう、分かりやすく明文化することを勧めました。
(2)計画的な株式移転
代表者によると、株式の移転については、分ってはいたもののなかなか手を付けれなかったとのことで、現在の兄弟の持ち株割合をそれぞれの後継者に引き継ぐことを前提にして、まずは、暦年贈与から始め、後継者の成長状況を見極めながら、第一線から退き、退職金等による株価対策を行って進めることとしました。
なお、事業承継税制の活用による引継ぎも検討しているものの、代表者である兄の持ち株には適用可能ですが、弟である専務の持ち株に対しては適用できないことから、兄弟間のバランスに配意しつつ慎重に検討したいとのことです。
また、名義株については、代表者が責任をもって整理することとしました。
(3)事業承継計画表の作成
これらの状況について議論を重ね、3年後に後継者2名を取締役に、5年後に代表者と専務の交代を目指した「事業承継計画表」を作成し、認識の一致を図りました。
関係者からは、お互いに面と向かって話し合う機会はなかったことから、「定期的に時間をとって事業承継について話し合えてとてもよかった。」「漠然と意識していたことを計画表として見えるようになると現実問題として捉えられるようになった。」とのことでした。
4.サブマネージャーの所感
事業承継に早くから着手することの重要性を示す良い事例となりました。後継者が若いうちから経営者としての教育を行い、計画的に「事業と株式」の承継を行う。計画表として「見える化」を図ったことから、一歩一歩着実に進めていくことが期待されます。