事例に学ぶ事業承継

わたしたちがこれまでにお手伝いをさせていただいた事例のご紹介をします。

早めの事業承継対策で会社の課題が見えてくる

事業承継の相談で明確になった「組織の整備・強化」の必要性
業種 建設業 業務内容 リフォーム業他
創業 昭和51年 従業員 正社員4名、パート10名
代表者年齢 58歳 地域 名古屋
資本金 2000万円 売上高 約2億7千万円
業種 建設業
業務内容 リフォーム業他
創業 昭和51年
従業員 正社員4名、パート10名
代表者年齢 58歳
地域 名古屋
資本金 2000万円
売上高 約2億7千万円

1.事業継承に至った経緯

当社は昭和51年に現社長の父が設立、現社長は2代目として当社の事業を引き継ぎました。ここ数年の業績は堅調に推移しております。
現社長は現在58歳とまだまだ現役世代ですが、今のうちから計画的に事業承継の準備をしておきたい、自身が65歳になる際には3人いる息子のうちの1人に代表の座を譲りたいとの意向を固めており、今回当ネットワークにご相談いただきました。

2.事業承継における現状

事業承継の現状整理や計画策定については、中小企業診断士を専門家に招聘して進めることとしました。現状を整理する中で、以下の課題が浮き彫りになりました。
【ヒトの承継】
現社長には息子が3人おり、うち長男と次男は当社とは別会社で建設業関係の仕事に就いております。長男は大手企業に勤務しており今のところ当社を継ぐ意思はない、次男は当社の関連企業で修行を積んでいる最中であり、将来は当社を継ぐ意思があるとのことでした。ただ、相談開始時には現社長は「長男と次男、どちらに経営者としての資質があるのかわからない」と、まだ後継者について決めかねているご様子でした。
【モノ・カネの承継】
当社の株式はほぼすべて現社長が保有しています。この株式をいつ、どのように後継者に承継していくかを検討する必要があります。また、当社の事業用不動産のほとんどは現社長の個人名義であり、この承継も併せて検討しておく必要があります。
【ノウハウ(知的資産)の承継】
当社は、社長及び経験年数の長い数名の正社員が各々で営業から施工管理までを一貫して行う体制をとっており、情報の共有は会議等で一定程度なされてはいるものの基本的には仕事のやり方について「各々の能力任せ」となっていました。また、仕事の分業は進んでおらず、「組織」というよりはむしろ「一人親方の集まり」という様相を呈していました。

3.事業承継に係る課題とその対応策

現社長が一番問題視されていたのは現在の会社の体制でした。これまでは自身の経験と勘を持ってこの体制で切り盛りしてきましたが、今後息子への事業承継、事業規模のさらなる拡大を考えると、現状の「一人親方の集まり」から、「組織」として体制を整備・強化する必要があることを痛感されていました。
この点について専門家と現社長でディスカッションを進め、「業務プロセスの見える化」「見える化した後、各業務の効率化・標準化」「分業の促進(営業と施工管理の分業)」といった取り組み方向を明確化することができました。
また、相談期間中に当社では全社員参加の「経営方針発表会」を開催しましたが、発表の準備から当日の発表まで、現社長の次男が積極的に関与し、自身の経営についての考え方を明確に示しました。この時の姿勢を見たこともあり、相談開始時点では決めかねていた後継者について、現社長は「次男に任せてみよう」との意思を固められました。
後継者を次男に定めたところで、株式については次男が当社取締役となってから徐々に暦年贈与で移行し、代表就任時には全株を次男に移行完了するよう計画を固めました。事業用不動産については早々に公正証書遺言を作成し、事業に支障が出ないよう顧問税理士等とも相談して準備しておくこととしました。

4.サブマネージャーの所感

相談開始時点では現社長は「誰を後継者にするか」はっきりとは決めていませんでしたが、相談を進めていく中で、「次男に任せてみよう」という意思を徐々に固められました。今回事業承継の相談を開始したことも、後継者決定のきっかけの一つとなったかと思います。
また、現社長が現在の規模で当社を経営していく分には特に大きな問題は生じていませんでしたが、「この事業を息子に引き継ぐとしたら」「息子の代でもっと事業を大きくしていくとしたら」という観点から考えると、現在の「一人親方の集まり」の体制では限界があり、組織を整備していかなければならない、という課題が明確に認識されました。
現社長はまだ50代と若く、事業承継を行うまでの準備期間を十分にとることができます。後継者が当社に入社した後は現社長と二人三脚で組織の整備・強化に取り組み、当社がより発展していかれることを期待しています。